貴方の闇を背負いたい
- 遊笑 鉄線
- 2019年8月19日
- 読了時間: 4分
何もない部屋に鎖で繋いで島崎さんを監禁したら、地下の牢獄に入れられたみたいに日付や時間の感覚が分からなくなって、終いには愛玩されるだけのお人形みたいになってしまう統島の話。
最初こそは頑張って色々考えていたけれど、虚無の時間があまりにも長すぎて脳が働かなくなって、ぼんやりとする時間も多くなって、でも統一郎の足跡がするとすぐに起きてくれる島崎さん。
足元に縋り付いて「とういちろうさん」と壊れたレコーダーのように繰り返す島崎さんを撫でて、優しく「亮」って統一郎が呼んであげると、顔をパッとあげて嬉しそうに笑ってくれる。
監禁されて思考が溶けてしまったように使える言葉も少なくなって、少しずつひらがな交じりに喋るようになってしまったけれど、そんな状態でもなお自分の呼ぶ声と主人(統一郎)の存在を覚えている島崎さんを見て、統一郎は改めて愛おしく感じてしまう。
昔は羞恥プレイをすると割と抵抗されたが、今は統一郎が望む事全てを懸命に叶えてくれるほど淫欲に従順な人間になってしまった。白い肌を掌で撫でれば素直に喘ぎ、身体全体で相手に尽くし、性交が終われば言われてもないのに口で掃除をする。
最早島崎さんは家畜化された動物と同じなので、野生回帰能力は無い。箱庭という名の何処かにある家の中で、統一郎に死ぬまで愛でられて生きていく。
とはいっても毎日必ず来るわけでは無いので、いない日は代わりに桜威さんが世話してくれる。島崎さんは桜威さんの靴音には鈍い反応しか示さないから、すぐにぼーっとし始める。
桜威さんは正直に言えば統一郎のことも島崎さんのことも"狂ってる"とは思っているけれど口には出さない。でも島崎さんから溢れる婀娜っぽさや、窓辺で日向ぼっこしている時の睫毛の影を見て"美しいものを誰の手にも届かない場所にしまう気持ちは分かる"とも思っている。
桜威さんが「島崎」って呼ぶと反応は鈍いけど、優しく「亮」と呼ぶとビクッと反応するから、この家に2人きりでいる時は名前で呼んでいる。あとたまに島崎さんとお話ししたりもする。そんなに長くは話せないけれど。
一緒に過ごしている間に情が移ってしまい、何とか鎖を切って部屋の扉をあけてあげたんだけど、一向に逃げる気配もないどころか不思議そうな顔で切れた鎖の横で座っている島崎さんに絶望してしまう桜威さん。
桜威さんは島崎さんの隣に力なく座り込むと、島崎さんはその脚に頭を乗せてきた。島崎さんの頭を無心で撫でていたら、彼の脳裏に"蚕"という昆虫の話が浮かんだ。今の彼と姿が被る。
うとうとしていると頬に雫が落ちてきたので、目が覚めた島崎さんは「ゆうすけくん?」と声をかけた。桜威さんは何かを答えることもなく、そのまま島崎さんの頭を撫で続ける。
その後、夜に鎖を切ったことを統一郎に報告し、誠心誠意謝って、この約目を外されることも考えて覚悟をしていたけれど、強制視姦プレイで許してもらえることになった。
彼等の交わりを部屋の角に置かれた椅子に座ってひたすら見てるというプレイなんだけど、桜威さんは何とも言えない気持ちになる。島崎さんはもう統一郎無しでは生きていけないというのが分かってしまったから、可哀想だとは思うけどどうすることもできない。
日々過ごしている中で島崎さんの話すことに抑揚がないというか、感情の起伏が少ないと思っていたけど、こういう事をしている時の島崎さんは"生きている"ので、やっぱり連れ出さないほうがいいのかもしれないと、桜威さんはそっと考えていた。
桜威さんの視点では統一郎は"悪"に見えていて、でも島崎さん視点からの統一郎は唯一無二の神的な存在である。島崎さんはこの運命を選ぶ事で統一郎の中の"確立した役割"を与えられたうえに、生涯愛してもらえる約束がつく。これ以上幸福なことはない。
統一郎も島崎さんのことを大切にはしている。ただ一方で、個性を潰してしまったのは失敗だったと思ってしまう。あの自由気ままな風のように生きる姿を見れないのはおしい、もっと駆け引きを楽しむべきだった、とも。
まあそれでも、今日も足元に縋り付いて名前を呼んでくる島崎さんを見たらどうでも良くなってしまう。宝物を自分だけが知っている場所に隠すように、島崎さんを鍵付きの宝箱にしまって甘く溶けるほど愛でる。この世界で、島崎さんを好きにできるのは統一郎だけ。
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