諦めず生きた日々
- 遊笑 鉄線
- 2019年8月20日
- 読了時間: 3分
島崎さんの統一郎に対する感情の天秤、愛と同じ重さとして釣り合いが取れるモノは"死"だけ。彼から愛されなければ、島崎さんは死んでしまうのも同然。そんな統島の話。
島崎さんは、自分が持っている限りの愛情を何時も統一郎に捧げている。統一郎は偶に返すけど、家庭や夢に忙しい人だからいつも見返りが返ってくるわけではない。
島崎さんは健気ではないので、そのうち心の中に少しずつバグみたいなものが生じてしまう。統一郎のことを世界で一番愛しているのに、同時に憎くも感じる時がある。
自己矛盾に陥って、精神がぐちゃぐちゃになってしまいそうにもなるんだけど、その前に島崎さんは自分の気持ちを刃物でぶっ刺して殺す。気が付けば感情の死体を放り投げていた墓穴もいっぱいになってしまって、島崎さんは途方に暮れた。が、今更辞められないから、そのまま山積みになっていく。
島崎さんが欲しいモノは、差し出した分に見合うだけの愛情も勿論だけど、本当は『お前が必要だ』って言葉。側にいて、と言って欲しい。何故なら島崎さんは何時もそう思っているから。
ただし、それを分かっていても統一郎は絶対に言わない。愛していないわけではなくて、期待させるような言葉で縛り付けてしまうのが嫌だから、島崎さんにはあまり優しい言葉をかけないようにしている。
でも統一郎が頑張って情を消そうとしても、無意識のうちに行動には表れてしまう。目が見えない分聴力が発達している島崎さんは、統一郎が自分の名前を呼ぶ声は普段よりも優しく、熱がこもっているのが凄く分かる。
そういう時、島崎さんは彼は他の誰かとは違う感情を自分には向けてくれていると思わず意識してしまい、触れられてもいないのに身体が熱を帯びる。そして、統一郎にもっと夢中になって欲しいという欲望が溢れて、自分でもどうしようもなくなる。
島崎さんがグッと気持ちの距離を寄せてくると"さらけ出しすぎた"と気が付く統一郎は、近付こうとすればするほど冷たくしたりとかして同じ距離から動かないようにコントロールをする。ただ、統一郎は素で優しくしているので、時が経てば地の気持ちが出てきて、優しくしてしまう。
しかしその矛盾した行動が、島崎さんを更に苦しめているのも事実。お互いに愛し合っているのは確かなのに、そこに踏み込むことは決して許されない。空腹で死にそうな時に目の前に食べ物があって手を伸ばすけど、それが永遠に手に入らない地獄と似ている。
それでも島崎さんは統一郎を諦めるという選択肢はないから、今日も不安と愛されたい願望に揺れ動く心を殺す。あの美しきカラダの奥には、統一郎に対する愛憎やら様々な感情の死骸が堆く積み上げられた狂った世界が存在しており、時折それが垣間見えてしまうこともある。
統一郎に対する愛の中には、今まで殺してきた分の感情も勿論入る。だからこそ、この愛の重さと同等であり、彼を救えるのは死だけ。統一郎に手放されて天秤が傾いてしまったら、島崎さんは孤独の世界を生きることなんて出来ない。
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