翼を捥いで
- 遊笑 鉄線
- 2019年9月19日
- 読了時間: 3分
統一郎の囲者である島崎♀さんが、彼が用意した妾宅で庶子である子供と二人暮らしをしてるという統島♀を思い付いたけど、めちゃくちゃ人を選びそうだと思った。
ある日、母(島崎♀さん)の為に息子が紅茶を入れてあげようと椅子によじ登り棚からカップを取り出した時に、誤って島崎♀さんのお気に入りのカップを割ってしまう。
音に気が付いた島崎♀さんがすぐに来て「怪我はない?」とか「大丈夫?」とか声をかけるのだけど、彼は俯いたままモゴモゴと口の中で何かを呟いている。
そっと耳を傾けると、彼は消え入りそうな声で「お気に入りのカップを割ってしまいました…ごめんなさい…」と謝っていた。
そんな息子に対して、島崎♀さんは「身体が無事なら良い」と抱きしめた。息子はすぐに「箒と塵取りを取ってくる!」と駆けて行き、足音が遠のいたのを確認した後に、わざとカップで腕に傷を作った。
それから1ヶ月後、統一郎が久々に会いに来る。息子は丁度習い事に出て行っており、家には島崎♀さんしかいない。二人はポツリポツリと少ない会話を交わしていたが、突然島崎♀さんが「統一郎さんが初めて私にくれたカップを、あの子が割ってしまった」泣き出してしまう。
統一郎は難しい顔をしたけど、暫くしたら島崎♀さんは「それでも、私はあの子を許したい」という。理由は、息子は"世間的に見れば許されざる子供"で、きっと理解のない人たちに傷付けられて辛く悲しい思いをすることもあるんだろうけど、それでも彼は"正しく育った"から、それが嬉しいと言う。
統一郎は「そうか」と一言呟いて、それから何も言わなかったけど、黙って島崎♀さんを抱きしめてくれた。頭を撫でて「近いうちにまた来る」と離れる統一郎に「それは具体的にいつ?」と聞こうとしたが、島崎♀さんは言わなかった。その言葉は、2人の間ではタブーだったからだ。彼女は無理やり笑顔を作って統一郎を送り出す。だが、心がついていかないのか、彼の足音が去って行った後も暫く島崎♀さんは玄関に立ち尽くしていた。
習い事から帰ってきた息子は玄関に立っていた母に少し驚いたが、すぐに笑うと"ただいま"と声をかけた。島崎♀さんはゆっくり振り向き「おかえりなさい」と返す。その何時もの笑みに、内心ホッとする。
だが、やはりどこかしんみりとした様子の島崎♀さんに「おかあさん」と無邪気に抱きついて甘える息子。彼に気を使わせてしまったと思った島崎♀さんは、寂しいという気持ちを振り払うように彼の頭をそっと撫でて手を引いて家に入った。
因みにわざと腕を傷つけたのは、思い出のカップを捨ててしまうことで"その記憶がなかったこと"になるのが怖いから。どんなものであれ、島崎♀さんは統一郎から与えられたものを大切にしている。だからカップの代わりに一生その傷を持って生きていく。
正しく育ったの意味は、島崎♀さんのお気に入りのコップを割ってしまったとしても彼女は目が見えないので幾らでも誤魔化せるわけなんだけど、怒られる或いは悲しむと分かっていながらも嘘をつかず、素直に謝ったことだよ。
例え不貞から生まれたとしても、息子は陽の下で堂々と歩けるくらいには立派に育ったよって話。島崎♀さんはやっぱり心の何処かでは(母親だから)罪悪感を抱いていて、自分だけが悪いだけで、息子だけは幸せになってほしいと思っている。愛する統一郎の血を引いているのなら尚更。
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