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鴛鴦の契

  • 遊笑 鉄線
  • 2022年4月26日
  • 読了時間: 2分

更新日:2022年9月27日

これから妻になる愛しのマイちゃんをドキドキしながら控え室で待っている九井。

マイちゃんは前日に『はじめちゃん、絶対喜んでくれると思う』と言っていたので、どれだけ綺麗な姿が見られるのかと胸を躍らせていた。


ただ一方で、ものすごく嫌な胸騒ぎもあったが、九井は敢えて気がつかないフリをしていた。何もかもに絶望し、憎しみに囚われている彼女も、今日だけはそれらの苦悩から解放されてくれると九井は信じていた。


「お待たせ」と扉が開く音がしたので振り向くと、そこには嘗て死んだ初恋の人の姿を生き写したマイちゃんが立っていた。驚いて目を見開いたまま固まる九井に、マイちゃんは「そんなに喜んでくれるなんて…」と柔らかに微笑んだ。


彼女の内面を移したかのような底が見えない黒曜石の瞳とは打って変わって、透き通るような海の色をした瞳をじっと見つめることしかできない。何をどうしていいのかわからず、ただただ喉に迫り上がってくる熱くて酸っぱい液体を飲み込むことしかできなかった。


九井が黙っていると、ゆっくりと絵の具が染み込むように、マイちゃんの瞳の青が暗く澱んでいく。瞳のハイライトも消えて、表情もいつも通りの無表情に変わりそうになった瞬間、九井はやっと「とても、綺麗だと思う」と声を振り絞ることができた。


「本当?嬉しい。」と笑うマイちゃんは、世界中の、何処の誰よりも美しかった。その表情は嘘偽りなく、心底喜んでいる顔だ。九井は今すぐ泣き叫んで暴れ出したい感情をグッと抑えて、脂汗に塗れた顔を拭うこともなく無理やり笑顔を作ってみせた。


結婚の写真は後日、乾くんの住む家に送られた。当然のことながら乾くんはブチギレて写真を処分したくなったが、あまりにも似過ぎていて燃やすのもゴミに出すのもどうしても踏ん切りがつかなくて鍵のかかった引き出しにしまった。マイちゃんに対する憎悪は100万倍増えた。

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