明日を知りたい
- 遊笑 鉄線
- 2019年10月7日
- 読了時間: 2分
更新日:2022年9月12日
島崎さんが幼い頃にピアノをやっていたことがあって、それを知った統一郎が妾宅に住んで間もない頃の島崎さんにピアノをプレゼントしたら凄く喜んでくれた、という統島♀の話。
統一郎が来ない暇な日は、一日中ピアノを弾いている。「統一郎さんが次に来た時は何か弾いて喜ばせたいな」と島崎さんは考えていた。事実、ピアノを辿々しくも演奏した時は統一郎は静かに聴いて、終わったら拍手をしてくれた。それが島崎さんにとって、生きる糧になるくらい嬉しい。
そしてその内に島崎さんと統一郎の間には息子ができて(『翼を捥いで』参照)、彼もまたお母さんと同じようにピアノを弾くようになった。
ピアノを弾くようになったのは勿論お母さんとのコミュニケーションの一種でもあったんだけど、生まれるより前に家にピアノがあったから、息子くんは"亡き父はもしかしたらピアノが好きだったのかもしれない"と考えたから。島崎♀さんは実父のことを息子くんにあまり話したがらないから、息子くんは家の至る所に在る"母以外の誰かの痕跡"を見つけては推察をしている。そして空想の中の父に憧れを抱き、軈て息子くんもピアノを始めた、という理由。島崎♀さんは敢えて訂正はしなかったし、寧ろ二人で連弾して遊んでいる。
統一郎が来た時に彼がピアノを始めたこと、天国の父のためにたくさん練習して聞かせてあげたい口癖のように言っていると報告して、島崎♀さんは楽しそうに笑った。統一郎もほんの一瞬だけ笑って「もし発表会に出るようなら連絡しろ」と言う。島崎♀さんは「どうでしょうね」と首を傾げていたけど、心の中では(偶にしか来ないけど)息子に対してちゃんと愛情を持っているんだな、と嬉しく思っていた。
因みに息子くんは統一郎のことを知っているけど、島崎♀さんから"お父さんは死んだ"と聞かされているので実父だとは思っていなくて、叔父だと思っている。統一郎は息子くんとは1年に3回(誕生日/新年の挨拶/クリスマスの一週間前)しか会わない。
あと私が好きだからという理由で、島崎さんが一人の時に練習していた曲はピアノソナタ第8番/第2楽章ということになっている。
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