君待つと
- 遊笑 鉄線
- 2019年8月12日
- 読了時間: 2分
島崎さんが楽しければ良しな性格なのは、もしかしたら世間知らずな可能性もあるのでは?
家柄や身体機能の不具によって籠の中の鳥みたいな生活を強いられていた少年時代に統一郎に見出されて、それ以来ずっと側にいる島崎さんという統島の話
幼い頃からの刷り込みで"自分の世界は狭くて暗いものだ"と諦めていたところに統一郎が現れて、そこから色んなことを覚えたり、教えてもらったり、彼を通して"視る世界"はとてつもなく広いものだと知った。
統一郎と共に歩んだ毎日は面白いことに溢れていて、島崎さんにとってはかけがえのない大切な思い出も沢山ある。その中の1つが、統一郎が教えてくれた"光"の話。
少年時代の島崎さんにとって、統一郎と一緒に窓辺の席に座って話をするのが1日の中で一番の楽しみだった。ある日、統一郎は島崎さんに光の話をする。
しかし、島崎さんは生まれつき全盲なので、どんなに説明しても上手く理解出来ずに難しい顔をして首を傾げた。そんな時に、統一郎は手を引いて窓から差し込む光の中に連れて行き「これが光だ」と説明した。
島崎さんは少しぼんやりとしていたが、ボソリと"あたたかい"と呟いた後に「貴方は光だったのですね」と笑ってくれた。島崎さんは見ることはできないけど、統一郎がフッと一瞬息を吐いたことで"笑ってくれてる"と分かって、ぎゅっと抱きつく。
島崎さんの頭を撫でる統一郎の手は暖かくて、心がポカポカする。その後オレンジや赤は暖かいイメージと知り、島崎さんは赤=統一郎というイメージが付いた。
島崎さんが"自分の世界は狭くて暗い"と思ったのは、親の過保護な束縛によって何処にも行けないことと、同い年ぐらいの近所の子供たちからの心無い揶揄いが原因である。その繰り返される言葉の端々からそう思うようになったんだけど、統一郎が手を引いてくれることで世界は何処までも続いている果てのない場所と分かった。
また、初めて自分は価値のある"人間"であると認めてくれた。だから島崎さんは今も楽しく生きていられる。けど、統一郎は島崎さんがあんまりにも快楽主義者すぎて「育てる方向性を少し間違えた気がする」と思っている。
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