醜さを纏うだけ
- 遊笑 鉄線
- 2013年6月10日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年8月10日
元々イタリア屈指の貴族の家庭で育ったメローネちゃんは不変的で退屈で束縛された世界に飽き飽きしていました。そんなとき、マフィアの映画を見て“例え味方のいない悪だとしても、強い信念で自分の信じる正義を突き通す”という今置かれている状況の真反対な世界に憧れ着の身着のまま飛び出し家出→晴れてマフィアに。
しかしマフィアというのは辛い過去を経てなっている人が多く、メローネちゃんの過去や志望理由は周りの人から見れば“馬鹿にしている”と思われるほど甘い生活でした。
天然で翳りのない柔和な性格。苦労を知らない彼の笑顔には温室育ち特有の温かみさと人懐こさが染み出ています。
それは人々から見れば“願っても手にはいらなかった本当に欲しかったもの”でした。羨ましくて仕方なかったのです。
それからと言うもの、彼に対してつけられたあだ名は“お花畑”という見下された名でした。そして幼い頃親に捨てられ、劣悪な環境の施設で育ったギアッチョに目をつけられてしまったのです。
怒鳴る、暴力を振るうは当たり前。理由は何時も理不尽です。気に入らない、視界に入ったから、等が大半で誰も本気で止めてはくれません。唯、メローネちゃんは今まで叱責や罵倒を受けたことが無かったので“初めて自分のために怒ってくれる人”と思うようになりどんどん好きになってゆきました。嫌がらせと言うことにすら気がついていないという。
『周りの奴の半分も苦労していないお前が人の気持ちなんかわかるわけがない』
そう言われ続け、意味もなくエスカレートしてゆく仕置き。時には立てなくなるまで暴力を振るわれる日もあります。
それでもギアッチョが大好きなメローネちゃんは『こんなもので君が救われるなら』と何時も笑顔で応じ、恨み言をいうことはありませんでした。ですが優遇者にそんなこと言われると正直見下された気分になります。惨めで仕方ない悔しい思いでまた拳を振り上げ彼を殴り付けました。死にそうになると一応皆止めてくれる。死にそうになるとですが。
暫くしてギアッチョにも変化が訪れました。
『もっと頑張るから、痛いのだって我慢するから、お願いだから嫌いになったりしないで』血塗れな足元で虫の息のままそう呟き縋る彼を見ると気分がすっとする感覚のなかに、何かモヤモヤするものがあることに気付いたのです。ただ、彼には何なのか探そうとも知ろうともしませんでした。
そしてペッシ入団と共に兄貴に規制をかけられ暴力は減少→殴られ過ぎたために右目の視力が少し下がりましたが大きな障害も奇跡的に残らなかったのです。
今も昔も変わらず明るい性格の彼は最終的にはギアッチョに認められ、付き合うようになったのです。
皆は知りませんでした。本人すら認識しない小さな傷でも、少しずつ溝を作れば軈ては奈落の闇を作ることを。
メローネちゃんの心の中はいつの間にか恐ろしく暗い深淵の海が出来、そこには巨大魚が住み着いていました。結果として何一つ傷のなかった彼の心に歪みが生じているのです。周りと同じように、否、それ以上に激しく。
だけども彼は誰一人として恨んではいないのです。だからこそ皆は気付かない。リーダーだけは感じていますが。
本当に変わってないのです。生物を命あるものと感じなくなっただけで。
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